こんにちは。
神奈川・相模原の里山で自然農を営む「すどう農園」です。
ざっと雨が降っては、太陽が照り付ける日が続いています。小さな鞘をつけ始めた津久井在在来大豆には最適の天気です。
特に午後4時を過ぎてからの夕立は江戸時代にも「七つ下がりの雨」と言われたほど、突然に空模様が変わります。「底が抜ける」という表現をアベコベにして「天が抜けたよう」な空模様。折々に響く雷の音は、なぜか夏休みを思い出します。そうそう、子供の頃は雷がとても怖かったのでした。
そんな雨の切れ間にトンボが乱れ飛ぶ季節になりました。
トンボたちの半透明の羽に、傾きかけた西陽が乱反射する様子は、いつもの秋の始まりです。なんとも幻想的な光景。「フェリーニのアマルコルド」は、全編が美しい画集のような美しい映像つづられた古典の名作ですが、舞台はイタリアの架空の街、季節は秋の始まり。その秋を告げるのが、街じゅうに乱れ舞う綿毛なのですが、一体これは何の綿毛でしょうか?とにかく街の広場も通りも見渡す限りふわふわと綿毛が舞っている。あの綿毛をトンボに置き換えるたのが里山の風景です。
一人で草を刈っていると、向こうの森の中から無数のトンボたちが飛んできます。草刈り機のエンジンの音が聞こえるのでしょうか?あるいは地面の振動を敏感キャッチするのでしょうか、いったい今までどこに潜んでいたのかと思うほどの数が、音もなくグライダーのように飛来します。この無言の襲来というのが幻想的なのです。例えばこれが鳥であれば、にぎやかに囀りながら虫を食べに来ます。それはそれで、いかにも畑らしいリアルな日常風景なのですが、まったくサイレントな集団。長いつきあいなのですが、いまだに不思議です。同じ昆虫でもコオロギは我が世の春(?)のように秋を謳歌しているのですから対照的だ。
トンボの群れは、ただ意味もなく秋空を飛び交っているのでなく、草刈りのために慌てて飛び出した羽虫を、あの複眼で目ざとく見つけては空中で捉えて食べているのです。人間には見えない空中戦。
トンボはカマキリと同じ肉食昆虫です。オニヤンマのような大型のトンボはスズメバチさえも食べるそうです。それで二枚目の写真にあるように、日本ミツバチの巣箱に、スズメバチを越させないためにトンボの模型をつくって貼り付けました。製作はスタッフのAさん。そのおかげでか、今のところオオスズメバチは来ていません。それとは別にキイロスズメバチが来ていますが、こちらはオオスズメバチのように群れて巣を襲うわけではないので、巣箱の前にスクラムを組んでいる日本ミツバチが一斉に羽を震わせて威嚇することで追い払っています。なんだかサッカーのサポーターがウェービングをしているみたいです。でもかなり頻繁にやっているので、日本ミツバチも暑い中で疲れるんじゃあないかな。
トンボの話に戻りますが、こうして空を飛び回りながら蚊も食べてくれるので、トンボが舞う畑では夕暮れになっても蚊は少ないです。多様な生き物同士が関わりあうことで、場は安定してきます。畑→里山→地球と、レベルは変わっても、多様なイノチがあるほど安定するという根本は同じなのですね。
なので、まずはできるところから、命と命の関わり合いを育てていきましょう。そのためのヒントを「さとやま農学校」で感じてみてください。そして国分寺のカフェスローでも「あなたが街を耕すとき」というタイトルで一連の講座を開催します。人間も生物多様性のワンピースとして、どうやって大地とのつながりを作っていけばいいか、地道に考えてみたいのです。いろいろな実践をされている方をお呼びしてのトークです。カフェらしく談論風発しましょう。
「さとやま農学校・秋のショートコース」も、だいぶ埋まってきました。お早目のご予約をどうぞ。