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水と泥の季節

ハーブの収穫体験@さとやま草木譜

こんにちは。

神奈川・相模原の里山で自然農を営む「すどう農園」です。

 

梅雨に入ると前線が停滞して、天気は雨がちになりますね。
毎年のことですが、2月からグルグルと目まぐるしく動いていた空が、梅雨になると落ち着きます。それゆえ、すどう農園は「梅雨になるとホッとする」のですが・・・どうも今年は、あんまりホッとしません。肌寒さが先立つし、植物の育ちも春の早さとは一転して遅くなったように思えます。昔ながらの農事暦を使って「今年は冷夏」という予想をする農家さんもおいでです。さて、どうなるのでしょうか。

ここ数年の猛暑を思えば冷夏気味でもいいのではないか、そんな風にも思えますが、1993年の冷害によるお米の大凶作を覚えている人間としては「猛暑が逆に冷夏に振れればプラスマイナスでちょうど良い」などと言えるものではありません。まあ、常にリスクを頭の隅に収めながら、ことさらに悲観するのでなく、ゆっくりと手を動かすことです。

 

上の写真は昨日の雨の中で摘んだハーブです。

雨の雫をつけた花弁が濡れ睫毛のように切ない。
今年はエキナセアだけ妙に花が早いのも不思議。いつもは遅めに咲いて、霜の頃まで咲き続けるのですが。

 

里山体験@すどう農園

 

こちらは、今日のご近所の田んぼです。
この辺りの田植えは、昔ながらのゆっくり目です。梅雨の雨の中で早苗の並ぶ姿は風情のあるものです。


小栗康平監督(原作・宮本輝)の映画「泥の河」は、昭和30年代の大阪の河を舞台にしたものでした。ヘドロがメタンガスを噴き出す河を艀(はしけ)が行きかい、汚泥の河虫を採って売る老人、お化け鯉、大黒柱を河で失った一家が廓船(くるわぶね)をもやい、つまりは大いなる生態系として人間も魚も一緒に河で生きていた。いまこの映画を見ると、都会を流れる泥の河が、どこか田んぼに見えてきます。


陸に棲む私たちは、死んで土に還ると言いますが、今生の果てに水に還る、そんな命の形もあるのでしょう。
井伏鱒二の「さざなみ軍記」は、源氏に追われて瀬戸内海を西へ西へと島伝いに落ち延びていく平家の最期を「黒い雨」に通じる透徹した視線で記述したものでした。勇ましい合戦の描写はほとんどなくて、まさに内海のさざなみのように静かに水に還っていく一族の姿。映画「シン・ゴジラ」では傷付いたゴジラが海に潜っていったけれど、きっと同じような水の民なのでしょうね。

ウメの切り上げ栽培@すどう農園
ウメの切り上げ栽培@すどう農園

 

ウメも少しづつ収穫しています。写真は「切り上げ剪定」によるものです。一般的な弱剪定をしないので徒長枝がぐうんと伸びるのですが、たわわについた梅の重さでしなってくるので収穫は楽です。昨年が大凶作だった分、今年は良い感じです。