こんにちは。
神奈川・相模原の里山(相模湖)で自然農とアグロフォレストリーに取り組む「すどう農園」です。
「さとやま草木譜」の10月2回めの講座を開催しました。
まずは、7月に等高線栽培をした水場の修復から。
夏にだいぶ伐ったマダケも、まだ余力があるのか、ちらほらと生えてきます。伸びた竹はこまめに切る、地道な作業でやがて「根負け」させるのです。竹の良いところは、何しろ軽いので切り倒すまでが心地よい。しばらく乾かして葉が落ちて軽くなったら枝を落として片付けます。しなった枝に顔を叩かれないように注意。
そして水場の修復です。
せっかく整えた水場を、これ幸いとばかりにイノシシがやってきて「ヌタ場」にしてしまいました。ヌタ場とは、イノシシが毛皮に着いたダニなどの虫を取るために泥に身体をこすりつけることです。いわばお風呂のようにして身づくろいをするのですね。野生動物も、実はきれい好きなのでしょう。それはそれとして仕方がない。ここにまで柵を作るわけにも行きませんから。ジワジワと湿ったこのエリアに、深い穴をいくつか掘って水が抜けるかどうか、様子を見てみます。
いつも使っている鍛鉄の「根切り棒」は重さが5キロ以上あるヘビーな道具ですが、こういう穴掘りには最強です。先端の尖った方をグッサリ地面に突き刺すと、大体60センチくらい刺さります。地面にゴツっと深い気穴が開いた手応えを感じます。大地の奥底からの深い溜め息が漏れて来るようです。
こんなペースで、実にゆっくりした取り組みですが、いきなりデザインを決めて場所を作るのでなく「この土地がどうしたいと思っているのか」ということを感じてみるのが大事です。何度も繰り返しますが、大地との対話をするのです。きっと古代の人達は、そうやって場所を感じながら暮らしの場所をつくったことでしょう。空気や水の流れなどは、よほど場数を踏んだ人でないと読めませんから、私たちはむしろ謙虚に、少しづつ対話していくしかないのです。イノシシが来たというのも、なにかのメッセージとして受け止めることです。小さなメッセージをあつめていけば、いずれ私達なりの伝承神話ができるかもしれませんね。
農園に戻って、先日剪定したサクランボの枝を編んでいきます。長年ここにあった物置を撤去したので、この地面だけ草も生えずにポッカリと黒土のままです。これを瞳の黒目に見立てて、眼の形に周辺を形作ってもらいました。さてこの先、冬を越して春を迎えて、どんなものが芽生えてくるでしょう。ずっと眠っていた種でしょうか。あるいは風に乗って飛んできた種でしょうか。
農園から出て、奥山の林道をめぐります。2019年の東日本台風で豪雨のために崩れた林道です。まだ傷跡がそのまま残っています。秋の林道では木の実やどんぐりの様子も見ます。これが少ない年は、飢餓状態のイノシシや獣が畑に突撃してきます。そういうときは怖いです。今年はどんぐりが落ちています。下の写真はサルナシ。
2019年の東日本台風の傷跡
上の写真3枚は、2019年の東日本台風の時の土石流の後です。いまなお修復されていませんが、神奈川県も予算が厳しいし、一般車両の入れない林道を修復する余裕はないことでしょう。これからも各地で同じような崩壊が起きていますから、対応に追われて手一杯のことかと。しかしこの現場は明らかに人災です。ご覧のように防砂の堤防が作られていて、それゆえに土石流が起きています。こうした状況を行政はどこまで感じているのでしょうか?全国におびただしくある砂防ダムは、つまり土建のための土建です。こうして崩れたらまた公共事業が増えるというのは悪循環どころか、ある人たちにとっては豪雨のたびに、まさに仕事が「降ってくる」わけですね。
次回の「さとやま草木譜」は2022年11月05日です。
また少人数で開催します。今回の水から関連して「森に氣を流す」というのをテーマにします。
天気も良い頃合いですので、どうぞ五感を全開にしてご参加ください。