こんにちは。
神奈川・相模原の里山(相模湖)で自然農を営む「すどう農園」です。
真夏の草刈りが峠を越えつつあります。
草を育てて土をつくるのが自然農の基本形です。
もちろん一番の目的は野菜を作ることですが、そのための道のりとして草を「適切に」生やしていくことは大事です。この「適切に」というのが大事で、ここをはずすと野放図に草を生やしてしまうことになります。もちろん野菜もロクに取れません。どんな世界でも基本形は難しいですね。
でもしかし、草を刈っても刈っても生えてくる・・・などとボヤいてはいけません。
もちろん除草剤などは論外ですが、草の育ちを抑えるのでもありません。
草は健康に生やす。
なぜといって、そもそも草は生えてくるものなのです。
太陽のエネルギーを、水と二酸化炭素でパックしたものが植物ですから、夏に草が生えてくるのは当然のことですね。
だから、無理に草の伸びる力を弱めるのでなく、伸びようとしたら伸ばす、そうしてたっぷりエネルギーを吸って伸びきったタイミングで草を刈ってミミズや微生物の力で土に還す。こうして表土は有機質で厚くなり、腐植に富んだ肥沃な土ができてきます。
草といっても膨大な種類があるなかで、ハーレーダビッドソン級の大型種が、これまでも何度か紹介しているキク科のオオブタクサです。ときに3メートルを超える厄介物ですが、ススキのような抜けない株になるわけでもなく、見かけによらず根は細いので手で引っこ抜けます。ただし、根こそぎにするともう再生できませんし、枯れた根が地中で土に帰り、根穴をつくるというプロセスもなくなります。それなので「余裕がある限り」根は抜かずにおく(繰り返しますが・・・余裕があれば、という条件つきです)。
そしてオオブタクサは、クズやヤブガラシのように他の植物に絡みつくわけでもなく、その意味では扱いやすい。しかも背が高いので他の雑草への抑止力が強いのです。
オオブタクサは、5月に伸び出してから8月の終わりまで3回刈ります。3回刈れば、さすがに力尽きるようです。だから「伐っても伐ってもまた生える」とぼやくのは正しくないですね。そして3回の刈り取りで、相当の量の刈り草を土に還してくれます。これが貴重な緑肥になるのです。
例えばイネ科のオヒシバみたいな雑草では、茂り方は凄く見えても、刈り取った後は大した量の有機物にならないのです。枯れて乾けばスカスカとホコリ程度のものです。その点、オオブタクサの有機質の量はすごい。しかも茎が太いので、全部が土に帰るには時間がかかる。それまでの間、表土を守ってくれます。
というわけで、オオブタクサは花粉さえ飛ばさなければ、緑肥として非常に優秀なのです。
お盆を過ぎると急速に日照時間も短くなり、キク科の面々も花を付け始めます。二枚目の写真のように、オオブタクサの緑の穂が見え始めたら緊急アラートです。できる限り速やかに、直ちに刈る。
こうした刈り方をしているうちに、ブタクサは段々減り、違う植物が優先するようになりますから、機先を制してエンバクやクローバーなどの緑肥植物に差し替えていくのが理想のパターンです。
ただし、昨今の情勢で、輸入品の化学肥料は2倍以上に高騰し、あるいは品切れです。お陰で緑肥に目が向くようになったのはいいのですが、これまで市販されていたクローバーの種も需要が急に増えたせいか品切れが続出しています。
野菜を作るのと同じくらい、あるいはそれ以上に草を上手に生やすのは難しいとつくづく思います。生命力が強いだけ、こちらの思うままにならないことが多いのです。それでも草を刈っては敷き、刈っては敷き、それを繰り返すことが大気中の二酸化炭素の固定にもつながります。伸びてくる草は、大気中の二酸化炭素が土に戻ってきた証しです。恐ろしい豪雨から土を守ってくれる皮膚でもある。
あるいは3枚目の写真のように虫に食われる葉もあります、この場合には虫のフンがそのまま下に落ちて、植物の吸収しやすいリン酸化合物を供給してくれます。虫のフンといっても馬鹿にしたものでなく、地球上の昆虫の総重量は人類よりも多いそうです。となれば、虫のフンや遺骸の量も相当な量になるのでしょうね。
自然農における草の話は、それだけでも一年がかりの講座になるほどです。などと言っている間に種まきが始まりました。時間と体力がほしいです。
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