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自分が世界に溶けていく感覚

写真は、ごく普通の里山の光景です。お隣の畑の向こうに森があります。
けっこうな距離があって、誰かがいても音など聴こえないのですが、それでも誰か歩く人がいれば分かります。
今は農学校もないので、毎日が自分一人の作業のことがほとんどですから、黙って落葉を集めたり剪定したり、その繰り返しをしていると知覚がだんだん広がっていきます。これは誰でもそうでしょう。都会の雑踏のなかで、できるだけ口も耳もふさいで閉じているのとは逆の拡張。自分が周囲に溶けていく感じは臨死体験の経験でよく聞きますね。
とりわけ今の季節は、立春を過ぎて世界が広がっていく季節。そんなことも関係あるのかもしれません。
じいっと落葉かきなどしていると、あの人やこの人と交わした十年前、二十年前の言葉の切れ切れが浮かんできては噛みしめなおしています。あの時の言葉の意味はこうだったのか、もっとこういえば良かった。などなど。
そう思えば、ことばのやりとりも今は早すぎる。