秋風の立つ気配に風の強い朝を選んでエレベーターに乗る。
ややあって扉が開いて踏み出した眼前のパノラマ。
彼方の中央山塊や眼下のスカイライン、波頭を立てる大洋に心中で叫ぶ。
素晴らしい !
何と素晴らしいガラス窓だ !
曇りも歪みもない。
まるでガラスがないみたいじゃないか !
うっとりとガラスに吐息をつき、指でなぞるもガラスは気配を消して何一つ感じさせることがない。ただ賢者の静謐。
※ ※ ※
八重桜の塩漬けで塩飴を作りました。
3年前に伊藤サラさんに無理を言って作っていただいたのが後の2枚の写真です。
花びら一枚一枚を丁寧に選り揃えて飴にしてくださいました。
さすがにもう頼めないので、今年は自作。
透明は難しい。
レストランのメニューサンプルで一番作りにくいのはコップの水だそうです。さもありなん、ですね。
だから、我が身を消して佇まう美学には惚れ惚れします、
お酒も同じくだ。ホワイトリカーが美しい。
自分を主張せず、果実や漬物に寄り添う役割をまっとうする在り方。
ホワイトリカーだけを冷やして飲むと言うと皆さんは鼻で笑うけれど、自分を見てくれ聞いてくれというアピールに疲れた夜は、黙って寄り添ってくれる酒がいいと思いませんか。
かといって、中学校の理科室で放課後こっそり薄めて飲んだエタノールではダメなんです。あれは病院の味だ。
透明は難しいよ。
ちなみに白砂糖で作るとベッコウ飴になります。透明にするならパラチニットで。これもサラさんに教わりました。