こんにちは。
神奈川・相模原(相模湖)で自然栽培の野菜やハーブを育てながら農的暮らしの講座を開催している「すどう農園」です。
ここのところ夕立が毎日のように続くおかげで、だいぶ夜が涼しくなりました。昨年の夏は猛暑が続きすぎたために、空に溜まったエネルギーが堰を切ったような台風につながり、相模原市内でも人命が失われるほどの大災害になりました。今年は、こうした夕立が空の熱を少しづつ抜いて冷ましてくれるようにと願うものです。
存分な雨を吸って地上の草もそれぞれに猛々しく育ち、育った草にまた虫が来ています。ご覧の写真は苧麻(ちょま)です。カラムシとも言いますが、越後上布や琉球の宮古上布などは、この苧麻から繊維を取りだし、丹念な工程を経て布を織りだします。
ボロボロの葉の裏を見ると、色とりどりの虫たちが、思い思いに首を振って葉を食べています。梅雨前のような勢いです。苧麻は逞しいので、食われようが刈り取られようが、平気な顔で再生してきます。ここは特に何かを栽培しているエリアでもないので地主さんが年に数回の草刈りをするだけで、もちろん肥料などは一切ないのですが、こうして旺盛に、それこそ背丈を越えるほどの苧麻が毎年育ってきます。
非常に基本的な事なのですが、ここでおさらいをしておきます。太陽の光を受けて雨を吸って植物が育つ。つまり水と二酸化炭素を太陽のエネルギーで植物体にします。いわゆる光合成ですね。それを虫が食べると、そこで糞をします、あるいは虫は寿命が短いので朽ちて土に還ります。毛虫などはやがて飛んでいきますが、それにしても数か月後にはどこかで土に還るわけです。たかが虫、と思われるかもしれませんが、地球上の虫の量は膨大なものです。人類すべてを合わせたよりもその重量は遙かに大きい。小さいからイメージしにくいのですが、命を宿した有機物が地球上をくまなく巡っている様子、そしてその虫たちが絶え間なく生まれてはまた土に還っていく様子を想像してみてください。
昆虫が還った土は、ミネラルやリン酸などを植物の吸収しやすい形に変換してくれる腐植となり、そしてまた微生物も養い、地中の植物の根を育てます。太陽のエネルギーが巡り巡って、地球の命を循環させる原動力になっているわけです。根が地中から吸収した以上のものを二酸化炭素や虫の死骸が補ってくれることで、どれほど苧麻のような草が生い茂っても土が痩せて砂漠になるということはない。ここがオーガニックの原点です。もちろん農業の場合には、こうして育った植物を持ちだすわけですから、その収支がバランスを崩すときもあります。とくに、表土が極端にむき出すほど植物をすべて持ちだせばそこは一瞬とはいえ砂漠状態になります。せっかく表土を守ってくれている腐植も風や雨で失われていく。そうして太陽の紫外線にさらされた表土からは、微生物やミミズも逃げていきます。こうした循環の諸相に寄り添って食べ物をつくるのがオーガニック(有機栽培と言ったり自然栽培。自然農と名称はいろいろですが)の原点です。
さとやま農学校2021コースの説明会の概要も決まりました。3月からの開講に先駆けて1月からこうした基本的なところを動画でお伝えしていきます。種をまいたりジャガイモを植え付けたりする前に、じっくりと助走期間を取っていこうと思います。どうぞご参加ください。